今回の件は「違法」か?
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(ドリコムでよかった(ホッ))とか弁護士生命の危機に曝されないように、思いきっりひよって

、もう一度声を大にして確認しておきますが(しつこい?)、私は今回ライブドアが1/.3を越える株式取得にToSTNeT-1を使ったことについては、法的にみて「アグレッシブ」、あるいは「リスクが高い」と思うことは確かですが・・・これは「違法ですか?」といわれると、「違法だぁ」

と断言したりは、とてもできません。いや、本当に。
・・・というのも、公開買付けの文脈において、何をもって「市場取引」というかについては、判例や公表されている立法府見解などはないという、
典型的な「グレー・ゾーン」の取引であって、「クロ」とは言い切れない類のものだからです。
こうしたてグレーゾーンが多い・・・というよりも、現在の日本というのはグレーゾーンばかりなのですが、その中で生きる私のような弁護士は、ある部分論理的に、ある部分直感的に「法的リスク」を判断して、依頼者にアドバイスをしていきます・・・そのときに考えるのが、かっこいい言い方をすれば「法体系全体との整合性」・・・もうちょっと、分かりやすくいえば「これがOKだったら、歯止めがなくなってしまわないかどうか?」というものです。
で、「ToSTNeT-1は証券取引法にいう市場取引である」という前提でストラクチャーを組むことについては・・・私だったら、何を思うかというと、
それだったら日本の公開買付制度の「癌」扱いされている「強制公開買付制度」は、いくらでも抜けられるよなぁ、というものです。
日本の「強制」公開買付制度って?
というわけで、いったい日本の「強制」公開買付制度って何?ということになるわけですけど、物凄く典型的な例で考えてみましょう。(以下、法律の制度趣旨の説明になるので、退屈な方はパスOKです)
今、上場会社X社に株式の55%を保有する親会社Aがいるとします。ここでBがAから全部株式を譲り受けてX社を子会社化したいなぁ・・・なんてことを思ったとします。
まず、普通に市場を利用しようとしたらどうなるでしょう?
情報が全く漏れなかったとしても、その時により安い価額で売り注文があったりすれば、その分と取引が先に成立してしまいます。ましてや、どこかで、その情報が漏れれば、結果は悲惨です。
したがって、一番簡単で望ましいのは、AとBとの間の相対取引なのですが・・・日本の現行法では、この場合にも必ずTOBを行わなければいけないこととしています。
というのも、一般に、こうした支配権の異動が伴う売買(この基準が1/3とされています)に際しては、単なる一株当たりの経済的価値の合計とは別に「コントロール・プレミアム」という支配権異動に相当する対価が支払われるのが通常と考えられているのですが、TOBがなされない場合には、A以外の一般株主は、このコントロール・プレミアムの分配に与ることはできず、それは望ましくないという「政策判断」がなされているからです。
「政策判断」と鉤括弧付で書いたのは、本来、コントロール・プレミアムを他の株主と分かち合わなければいけない論理的な理由はなく、この「政策」は、「株主平等」的な観念的な平等主義を背景にした、かなりドグマティックなものだからです。この「政策」に対して、日本のM&Aの実務家がどう考えているかといえば、これは「撤廃すべきである」というのが、私を含めた多数意見ではないかと思います。(ところでヨーロッパにも「強制公開買付制度」はあるのですが、こちらは支配権の異動を伴う場合には、原則として全ての株式に対して公開買付けを行わなければいけない・・・つまり、上限を設けた公開買付けは認めないといった、これはこれで徹底的な形になっています。比較法的にみても、日本の「強制」公開買付制度は、ポジションが今ひとつはっきりしない制度になっています。)
しかし、他方で、どんなに「政策」として不当であっても、逆に、それだけに、この「1/3超の異動に際してはコントロール・プレミアムを平等に分配するためにTOBをしなければならない」という「政策判断」が現行法上は明確になってしまっているところがあります。
法的概念の「相対性」
ところで、そうは言っても
証券取引法の条文上は「市場取引」かどうかを基準としているのだから、東証が「市場取引」と位置づけているのだから、それでいいのではないのか?という考えも、当然あり得るわけです。
ところが、法律家にとっては当たり前、世の中の人にとっては、おそらく「はっ?」っていう感じなのが、「
東証が「市場」というかどうかと、証券取引法上の「市場取引」かどうかは、直接には関係ない」という理屈ではないかと思います。
よく法律家は法的概念の「相対性」という話をして、実際、商法でいう「市場」と証券取引法でいう「市場」の概念は異なり得るということを前提に、証取法上「市場」に入ってこないPTSや外国証券取引所の取引は商法上「市場取引」に該当するかといったことを、大真面目に論じちゃったりするわけです。
したがって、こういう、ちょっと不思議な世界に住んでいる法律家からみると、
「東証が「市場」と呼んでいる(あるいは取り扱っている)から」というのは、必ずしも決め手ではないという感覚になるわけです。
じゃあ、「市場」って何なの?
じゃあ、どうやって「市場」を決めるの?ということになるわけですが、そこで、先ほどの「強制公開買付制度」の「趣旨」に戻ってくるわけです。
つまり、趣旨から遡って、
「コントロール・プレミアムを他の株主に平等に支払わずに支配権の異動ができるか否か?」「そのためには、市場の特性のうち、どの属性が最も重要か?」という問題のたて方をすることになります。
で、この点から、「時間優先・価格優先の原則」(時間優先・価格優先については、東証
のこちらを)が該当しているか、とか、「実質的に他の株主の参加機会が確保されているか?」といったことを考えながら、証券取引法が予定する「市場」なのかどうかを見ていくというアプローチをとってきたわけです。
で、ToSTNeTは、「市場」とはいいつつ、こうした市場の制約を不便と感じる利用者のために作られたという面があって、これをそのまま証券取引法(や商法)上「市場」として扱っていいのか、という疑問が、結構昔から論点になっていたわけです、
で、同じように(商法上の)「市場」性が問題となった自己株式買付けについては、ToSTNeT-2の事前公表型非クロスだけを適切な方法として認めて、他のToSTNeT取引は使えないという整理を東証自身がしたわけです(cf.「
自己株式取得内閣府令について」)。
勿論、これは専ら相場操縦規制との関係を意識したセーフハーバールールで、これ以外の取引を「市場取引」とは認めないという立場をとったわけではないのですが、これの基には公開買付けにおける「市場取引」の議論があったことや、東証自身が、自らの提供しているToSTNeTについて、一定の区別をしたというところからは、実務家の間ではそれなりに重い線引きと受け止められていたところです。
もっとも、こうした考え方に対しては、法律家の間でも「コンサバすぎる」とか、東証が「市場」として取り扱っているんだから、証券取引法上も「市場取引」として取り扱わざるを得ないのじゃないかという意見もあるわけです。
というわけで、やはりこの論点は非常に「グレー」な論点として、日本のM&Aに関与する実務家の間では、長年頭の痛い問題だったわけです。
でもToSTNeT-1は「匿名」取引では?
ところで、磯崎さんが、ToSTNeT-1について、次のような指摘をされています。
こういう意味でも、ToSTNeTは「立会外」ではあるものの、まさに「東証の中」ですから、ずばり「市場内」になるような気がしますが、どうなんでしょうか。
(アメリカ等では、TOBの規制とPTSとの関係はどうなってるんでしょうか?)
ToSTNeT-1 は、機関投資家等の多様な取引ニーズに対応するもので、単一の銘柄の注文についてネットワーク上で匿名で取引の相手方を探し出し、個別に条件交渉を行い、取引を成立させることができます。
という東証のホームページでの説明からしても、相手がだれだかわからずに取引するのであれば、マーケットインパクトを与えずに取引もできるわけだし、「市場内」とみなして、一般的には問題ないと思われます。というか、それだけ大量の注文を普通取引にブチ込まれても、それはそれで迷惑そう。
磯崎さんの仰るとおりで、ToSTNeT-1は「建前」としては、相手方が誰か分からなくても取引は成立します。(もっとも、磯崎さんは、つづいて「ただーし」ということで、ということで、某ヒルズ内での仮設の会話例もあげていらっしゃいますが)
実際、報道によれば、堀江社長は「誰から買ったかは、特定が難しい」と仰っているようです。
これ以上は、証券市場の
摩訶不思議、一弁護士の「常識」の想像を超えた世界になので、「
月曜日の場がしまった後に、30%の買いをToSTNeT-1も入れたら「偶然」30%の売りが入っていたので、ラッキー!
」とか、「
TOBかかっている株で機関投資家が相手の素性も確かめずにブロックで売りに出していてくれたよ、ラッキー!
」といったことが起きてしまうんだ、と、ひたすら感心するしかないのですけど・・・
さて、いつものことながら長くなってきたので、とりあえずこの辺で1回切りましょう。
続いては、じゃあ、もしこれがTOB規制との関係で問題があるとすれば、どんなことが起きるのか、とうことと、逆に、これがTOB規制との関係でOKということになると、何が起こるのか、ということと、若干のプラスαについて。
では、また(早ければ数時間後、遅ければ明日)、ということで
ライブドアによるニッポン放送買収の試みに関して、以下の記事を書いた。 2005年02月09日:ライブドアがニッポン放送株 [Read More]