刑事責任の可能性?
でも、よく考えてみると、地雷というか、法的リスクはどこに埋まってるんですかねぇ?
まず考えられるのが、公開買付けをしなければならないにもかかわらず、公告その他の手続を遵守しなかったということに対するサンクションです。
ざっとWEBで証券取引法をながめてみると、証券取引法27条の3の公告をしなかったことに伴う罰則(
3年以下の懲役and/or300万円以下の罰金)(198条4号)があります。また、これは法人について両罰規定がありますから、代表者や従業員が、この罪で有罪になった場合、
法人は3億円以下の罰金ということになります。(
ところで、今気付いたんですけど、公告をやって虚偽記載の方が公告を怠るよりも罪は重いんですね(5年以下and/or500万円以下)。
で、この刑事罰は、どういう形で具体化するかというと、証券取引等監視委員会の調査が入った上で、違法行為があったと認定されれば、検察に告発がなされて、検察が裁判所に起訴して、公判手続という流れになります
(・・・確か。。。WEBで条文を見るのは疲れるので、条文確認は未了です。間違ってたら誰か指摘してください)。
というわけで、まずは
証券取引法等監視委員会の動向というのが、大きな関心事になるわけです。ただ、従来の傾向からいえば、証券取引等監視委員会は、法令の規制範囲自体に疑義のある取引に踏み込むことは、法令の所轄官庁に遠慮してのことなのか、余り積極的ではなかったように思われます。また、法令の所轄官庁も、こうした微妙な問題に対しては「私的取引の自由を阻害する」とか「規制緩和の流れに反する」という批判を意識してか、介入に消極的な傾向があったような気がします・・
多少の疑義があっても、東証が「市場」という以上は「市場」でいいよ、と、いうことであれば、それはそれですっきりするので、そういう解釈をストレートに示してもらうのも手なのですけど・・・たとえば、ライブドアが金融庁に法令解釈に関する照会をやるっていうのは、どうでしょうね?・・・(今さら、違法といわれても困るだろうから、やらないでしょうけど・・・なら、フジテレビかニッポン放送が照会してみるとか?)
取引は無効になるか?
次に、仮に、証券取引法上のTOB規制に反しているということになった場合に取引は「無効」になるのでしょうか?
実は、ここはよく分かりません。
一般的には、証券取引法のディスクロージャー規制違反は、私法上の取引の効力には影響を与えないと考えられていると思うのですが、TOB規制は少数株主保護や株主平等原則といった性質を有しているので、例外的に強行法規的性質を有しているという議論が成り立つかも知れません。
まあ、「だめもと」で主張してみる価値はあると思いますけど・・・フジテレビやニッポン放送に訴えの利益があるかといったあたりも論点でしょうねぇ・・・
損害賠償請求 〜 誰が何について?
さて、では「違法」な行為で損害を蒙ったものからの損害賠償請求は?ということになると・・・
「損害」を蒙ったのは誰なのでしょう?
TOB規制の趣旨から考えると、コントロール・プレミアムの分配に与れなかった一般株主ということになりそうなのですが・・・ざっと、ネットで証券取引法を見回した範囲では、そもそも公告をしなかったことについて、一般株主が買付者を訴えることができるという規定が見当たりません・・・
もちろん、証券取引法の規定がなくても、民法709条以下の一般的な不法行為責任を追及することは可能ですが、この場合、「違法性」「損害」「因果関係」の全てについて請求者側で立証をしなければいけません。
特に今回のような場合には、ライブドアの行動で株価が高騰して投機的な利益を手にした人がいる一方で、この高騰した株価で株式を買った人自体はライブドアの行動の後に入ってきた人ですから、損害との立証関係の主張は容易ではなさそうです。
また、米国のようにクラス・アクション訴訟がない状況では、少数株主が自ら弁護士をやとって戦うということは簡単なことではありませんし、極端な話、強く不満を言っている株主がいれば、その人からだけ、こっそりToSTNeT-1なりを使って株を買ってあげるというやり方もできないわけではありません。
・・・結局、地雷原は突破されてしまう?
・・・といったことを考えていくと、今回のライブドアのように確信犯的に地雷原突破を狙う人が現れると、なかなか止める人って見当たらないものです。
頼り?は証券取引等監視委員会ですが、ちょっと及び腰っぽいとすれば、「違法行為はけしからん」ということで最近の有価証券報告書問題については、過剰なまでに迅速に対応している東証いうことになるのですが・・・・自分で「市場取引」ですと宣伝しているサービスを使うのは、「証券取引法上問題がある」とはなかなかいいづらい・・・っていうか、それだったら、事前にどっかで注意しておいてくれ、っていう話で、東証自身に火の粉が飛んできかねませんから、それも考えづらいところです・・・というわけで、
実は、そこらへんに埋まっている地雷は全部不発(地雷を踏んでも爆発しない)っていう性質のものなのかも知れません。
・・・あとは、ニッポン放送が、コントロール・プレミアムを受領できなかった一般株主のために立ち上がるしかないわけですが・・・・・・
ライブドアの狙いは?
ところで、私はライブドアの今回の株式取得の狙いは、西武鉄道株TOBのとき以上によく分かりません。
中波に進出したいというのですが・・・ニッポン放送株式の価値の大部分は保有しているフジテレビ株式の価値ですから、事業以外の部分に払う部分が大きすぎるように思われます。それに35%というのは、所詮「拒否権」どまりで、支配権までは微妙な水準です。フジテレビのTOBの帰趨にもよりますが、フジテレビが過半数を握るような事態になれば、大したことはできません。
では、フジテレビ株式が狙いなら・・・確かに22%は小さいボリュームではありませんが、いまどき20%そこそこの株式保有では色々な意味で中途半端な気もします。
タイミングの意味でも、TOBの最中に対抗買いをするというのは、オークションを始めるということですから、万が一勝ったとしても「勝者の災い」に悩まされる可能性もあるわけで・・・本気でニッポン放送が欲しかったのであれば、フジがTOBを開始する前に話を持っていっておかないと・・・
・・・で、またまた、ものすごくうがった見方で申し訳ないのですが、ライブドアは、「今回フジテレビは意地でもTOBを成功させたいはずだから、対抗買いを入れれば、必ずTOB価格を上げてくる」という「読み」で、これは、まさに「社運」をかけたギャンブル、いなげやに対する「秀和」みたいなものなのではないかと・・・それならそれで何か分かるような気もします。
(・・・30%弱の株式を子会社に持たせているのも、それなら納得がいきますしね)
ところで、その
思惑とは逆にフジテレビが価格を上げないという戦略をとった場合、どうなるでしょう?
っていうか、私からみれば、ライブドアは「もう買っちゃった」わけですし、フジテレビとしては、今さら焦ってTOBを成功させる必要もないわけです。粛々と終了日まで待って、50%超の応募があればそれでよし、応募がなければ、またタイミングをみて仕切りなおせばいいわけで、何も焦って今の高騰しちゃった株価をベースに動かなくてもいいような・・・
ライブドアの軍資金が膨大にあるのであれば、逆に子会社化される虞もありますけど、とりあえず軍資金の額は800億円ということで見えているわけですしねぇ・・・
まあ、私のように、何でもかんでもグリーンメイラーみたいに見るのもよくないので、純粋にライブドアのストラテジックなポジションから考えた今回の買付けの意図についても色々と検討されている方々がいらっしゃるので、そちらも併せてご覧になるといいかと思います。
最後に
この件については、他にも色々と法的なつっこみどころが満載です。
っていうか、何でこれに突っ込んでいる法律家が他に見当たらないんだろうと思うのですが・・・皆、忙しいってことですよね、きっと・・・いや、暇なわけじゃなくて、一生懸命時間を見つけてるんですけどね、これでも・・・
まあ、めげるのはその辺りで、以下、その他つっこみどころをダイジェストで
- 堀江社長の記者会見(livedoor news)より
「どこまで買い進むかは現時点ではいえない。市場次第だが、買えれば買う。大和証券を含め、大株主50カ所ほどに買い取りの意志を伝えた」
50カ所に声をかけてTOBじゃなければ、およそ「強制」TOBなんてありえなくなりそうな気も・・まあ、最後にToSTNeT-1を使って「システム上、相手は直接にはわからない」といってしまえば、今回と同じことなので、一度渡ってしまった橋ということになりますが・・・
- この発言で株価はまた上がりそうですけど・・・こういう株の需給に関する発言は、ただでさえ株価を高騰させることになって、株式の購入が難しくなりますし、相場操縦的な観点からもセンシティブですけど・・・そこは覚悟の上で、やはり地雷原に入ったということですかね?
- もう少し詳しい会見要旨の方から(下線は筆者)
Q.今回の株式の取得、つまり、放送局の株式が欲しいな、と思ったのはいつ頃か。ニッポン放送の株価が欲しいと思ったのはいつか。転売する可能性はあるか。フジテレビやニッポン放送の役員にライブドアから誰か送るつもりはあるか、注文を付ける意志はあるか。
A.以前から株式の取得をするかどうかは別として、既存メディアに対しての業務提携はいろいろな形で行っており、テレビとインターネットの未来などについてはいろいろと考えることもあり、経営参画をしたり、資本提携をしたり、そういうのができるのであれば、できるかできないかに関わらず、興味はあった。それができるようになったのは今日になってからのこと。CBの発行ができるようになったので借り入れなども起こせるようになった。今日やっと買えるようになったような状況。株式の取得を考えたのはいつかというと、今日ということになる。
Q.売ってくれる先はどうやって見つけたのか?
A.公開買い付けによって。パートナーとなる証券会社などの協力によって見つけて頂いた。それが朝になって出てきて、買い付けたというだけ。
つまり、資金繰りがついた、その日に「たまたま」30%が立会外で売りにでていて、たまたま「朝になって見つけた」ということですね・・・証券市場って、奥がふかい・・・っていうか、R30さんの(期間限定)ライブドア堀貴文社長質疑応答は、実況感に溢れていて最高です。
- ところで、村上さんは売ったんですかねぇ?
もしそうなら、いつもは「一般株主の味方」の村上さんですけど、今回は一般の皆さんには知られずに、ちゃちゃっとライブドアにブロックで売って去っていってしまったんですかねぇ・・・ま、これは戯言ですけど。
ま、この件はまだまだ色々と話題になりそうな要素を持ってるのですが・・・さすがに疲れてきたので、今日はこのへんで。
47th先生のBlogで、私法上の効力だけでなくいろいろと詳細に検討されていました。ご参照ください。... [Read More]